兵庫県を拠点とし、プロ野球の試合中継をはじめとする地域密着型の番組づくりで熱狂的なファンを持つ株式会社サンテレビジョン(以下、サンテレビ)。1969年の開局以来、半世紀以上にわたって兵庫県民の暮らしに寄り添い、地域メディアとしての確固たる地位を築いてきました。しかし、スマートフォンや動画配信サービスの台頭など、生活者のメディア接触行動が激変する昨今。同社は「視聴率という数字だけでは見えない視聴者の本音」をどのように把握し、番組編成や経営に活かしていくかという大きな課題に直面していました。そこでサンテレビは、兵庫県内企業とスタートアップの共創プログラム「HYOGO Open Innovation Matching 2025」を通じて、株式会社はこぶんが提供するデジタル手紙型VOC(顧客の声)収集・分析ツール「ホンネPOST」を導入。視聴者・非視聴者を問わず、生活者の「本当の声」を集める取り組みを行いました。今回は、本プロジェクトを推進するご担当者様に、ホンネPOST導入の背景や期待したこと、実際に集まった1,000件を超える声から得られた驚きの発見と、今後の事業展開に向けた展望について詳しくお話を伺いました。株式会社サンテレビジョン 経営企画局 経営企画部(左から)大寺さん・森村さん課題・目的・「視聴率」や一部のコアファンの声だけでは、番組が選ばれる「理由や背景」が把握できていなかった・視聴習慣が変わる中、普段声を上げないサイレント層(若年層やライト層)のリアルな声や潜在ニーズを可視化したかった導入の決め手・スマホから匿名・手軽な投稿形式で、義務感なくホンネを引き出せる新しさ ・設問設計から番組テロップ・CMデザインまで一気通貫のスピーディな伴走効果・1,000件超、累計11万字に及ぶ熱量の高い声が集まった。・「習慣視聴」「地域密着」など同業他社との差別化につながる価値を可視化・視聴者の生の声が“共通の事実”として社内共有され、新たな経営理念の策定など意思決定の解像度が上がった激変するメディア環境の中で、視聴者のリアルな声から「選ばれる理由」を言語化する挑戦—まずは、今回ホンネPOSTを導入される以前に、抱えていた課題や感じていた危機感について教えてください。 テレビ業界全体が直面している課題でもありますが、長年テレビ局における意思決定の重要な指標は「視聴率」でした。しかし、視聴率はあくまで「結果としての数字」に過ぎません。特に近年は、若年層のテレビ離れや、動画配信サービスを利用したデバイスでの「目的視聴」へと視聴習慣が大きく変化しています。生活者が「なぜその番組を見続けているのか」「なぜ離れてしまったのか」、あるいは「他局の大型特番が並ぶ中で、どんな文脈でサンテレビにチャンネルを合わせるのか」といった、行動の背景にある感情や理由は、数字だけでは十分に把握することができませんでした。—過去にアンケートや、視聴者の声を集めるための施策は行われていましたか? サンテレビは放送や配信などを通じて視聴者に様々なコンテンツを提供しているほか、イベント開催などオフラインの事業も展開しております。それらに対する満足度は視聴率であったり、イベント参加者へのアンケート、SNS、パブリックセンター(視聴者センター)へのご意見などから知ることができますが、それだけでは限界がありました。特に、テレビ局にとって長年最大の指標であった「視聴率」という数値は、あくまで“結果”でしかありません。なぜその番組が選ばれたのか、どんな文脈でチャンネルを合わせていただいたのかといった、コンテンツが選ばれた詳しい“理由”や“背景”を知ることはできません。さらに、アンケート、SNS、パブリックセンター(視聴者センター)へ寄せられるご意見は「テレビ視聴に強い関心がある熱心な視聴者層」に偏りがちです。私たちが本当に知りたかったのは、そうしたコアなファン層の声に加えて、普段あまりテレビを見ないライト層や若年層、いわゆる「サイレントカスタマー」の方々が、サンテレビに対してどのような印象や期待を抱いているのか、生活者のリアルな声・潜在ニーズを可視化して、次の一手を考える必要がある中で、その方法を探っていました。— 番組編成や意思決定において、「視聴者の一次情報」が不足していたのですね。 おっしゃる通りです。社内で「こういう番組がサンテレビらしいよね」と語られるポイントがあっても、それが本当に今の視聴者に刺さっているのかを裏付けるデータが弱かったのです。「ふわっとした指標」ではなく、視聴者の生の声という強力な根拠(一次情報)があれば、きっとスポンサーや広告代理店との議論もスムーズに進みますし、自信を持って「サンテレビらしい」編成を組むことができるはずです。だからこそ、今このタイミングで『選ばれる瞬間の構造』や『サンテレビらしさ』を、視聴者のリアルな声から改めて言語化したいと考えていました。—そうした課題を抱える中で、「ホンネPOST」を知ったきっかけと、導入の決め手となったポイントを教えてください。 きっかけは、兵庫県が主催するオープンイノベーションプログラム「HYOGO Open Innovation Matching 2025」でした。自社だけでは解決が難しい課題に対して、外部のスタートアップの力を借りて新しいアプローチを探りたいと考え、参画しました。その中で、はこぶんの森木田代表のピッチを拝見し、ホンネPOSTの導入事例などを見るうちに、「これなら、これまでリーチできなかった層の声が拾えるかもしれない」と直感しました。 第一印象はシンプルに「新しいアプローチで面白そうだな」というものでした。一番のポイントは、スマートフォンから匿名のまま、手軽に気持ちを伝えられるUI設計です。従来のアンケートフォームのような堅苦さはなく、手紙形式の自由記述で回答できる仕組みになっていたため、これなら「サンテレビの事を知っている」「観たことはあるけど……」といった、比較的熱量の低い方々も、義務感なく、能動的に本音を語ってくれるのではないかという期待を持てましたね。—導入するまでの準備や、実際の設問設計、テレビ局ならではの視聴者とのタッチポイント設計など、感じたことはありましたか? はこぶんの森木田代表は兵庫県のご出身ということもあり、県民同士通じ合う部分があり、私たちの意図や課題感をすぐに汲み取っていただけました。動画配信サービスの普及などの影響で、生活者の視聴習慣は変化しています。このため、私たちのコンテンツを、いつ・どこで、或いはどんな時に観て頂いているのかといった視聴シーンや、どんな想いで、何を楽しみに観て頂いているのかといった感情的な部分も把握したいと思っていました。単に番組の満足度調査をするのではなく、集めた声から価値を見出して、「サンテレビの存在意義を再定義したい」とお伝えしたところ、その目的から逆算した設問設計をスピーディに進めていただき、さらに番組内で放送するテロップやCM、ポスターなどのビジュアルデザインに至るまで、ワンストップで支援していただけた点が大変ありがたかったです。導入決定から運用開始に至るまでのスピード感は、想像以上に早かったですね。また、システム面の使い勝手も魅力的でした。ホンネPOSTにはAIによる感情分析機能があり、寄せられた自由記述の声を分析して結果のサマリーを出してくれます。マーケティングの専門知識がない私たちにとっても、全体像や課題、対策の概要が直感的に見えてくるので、非常に扱いやすいと感じました。11万文字超の“熱量の高いホンネ”から見えた「サンテレビらしさ」— 実際にホンネPOSTを公開して、どのような反響がありましたか。 サンテレビで放送する番組内でのテロップやCM、その他ポスターやカードなど多様な接点を活用することで、驚いたことに、投稿件数は1,000件を超え、累計文字数も11万字以上に達しました。これには社内でも大きな反響があり、上層部を含めて「質・量ともに非常に価値の高いデータが集まった」という共通認識を持っています。これは従来のアンケート手法ではなかなか考えられないことです。私自身、ダッシュボードを見に行って寄せられた声を確認していましたが、本当に多くのファンの存在を実感でき、大変ありがたく、励みになりました。— 具体的に、社内で言われていた「サンテレビらしさ」と、集まった視聴者の声との間にギャップや新たな発見はありましたか。 最も多かった声は、やはり比較的視聴率の高いプロ野球中継や、関連コンテンツに対するものでした。これはサンテレビの強みとして再確認できました。一方で、それ以外の番組に対する声も十分な数が集まり、多くの発見がありました。例えば、釣りやゴルフといった趣味性の高い番組について、「その時間を楽しむのが生活の一部・習慣になっている」という熱い声が多数寄せられました。特定の層にとっては、かけがえのない価値を提供できていることが分かったのです。 また、災害・防災報道への評価の声も多かったです。視聴者の方々から「サンテレビの災害報道に安心感がある」「いざという時の避難先として頼りにしている」という声をお聞きできたことは、現場で取材を続ける記者にとっても大きな励みになります。そして意外だったのは、データ放送に関するお声です。サンテレビのデータ放送では簡単なゲームを提供しているのですが、「子どもたちが安心してゲームを楽しんでいる」「親としても安心して見せられる」という意見が寄せられました。スマホやオンラインゲームが普及する中で、テレビのデータ放送という安全な環境で子どもたちが楽しんでくれているという事実は、私たちにとって新しい発見でした。今後は、そうした層に見合ったコンテンツ作りも考えていかなければならないと気づかされましたし、ホンネPOSTの「いい意味で抽象的な自由な問いかけ」だったからこそ、こうした意外な角度からのインサイトを得ることができたのだと思います。集まった声をデータドリブンな意思決定と、経営理念の再定義へ— 今回得られた1,000件超のデータは、社内でどのように受け止められ、どう活用されているのでしょうか。 視聴者の生の声が“共通の事実”として構造化されたことで、経営層や各部署の意思決定の解像度が上がったと感じています。具体的な編成や企画への反映はこれからですが、実はサンテレビでは、地方局としての存在意義を改めて問い直し、働く社員や社外のステークホルダーに向けて、2026年4月1日に経営理念を公開しました。理念を策定するにあたり、ホンネPOSTで集まった「視聴者からどう見られているのか」「どのような価値を期待されているのか」という声をしっかりと反映させています。—今後のサンテレビの向かう先やコンテンツづくりはどのように進化していくのでしょうか? 現在は次のステップとして、効果的なデータドリブンの体制作りを進めるべく、社内調整を行っているところです。今後は、視聴率=結果、ホンネPOST=理由という形で、今後のコンテンツ作りや番組編成に役立てたいと思います。 また、今回収集できたホンネを踏まえて、今後は「サンテレビならではの価値」をさらに深めていきたいと強く思っています。具体的には、先ほども触れた「趣味性の高い番組」や、視聴者の日々の生活リズムを支える「専門コンテンツ」のさらなる強化が一つの方法だと考えています。それに加えて、例えば関西や兵庫県といった広い単位だけでなく、市や町、コミュニティなどのいわゆる“マイクロローカル”に踏み込んだ情報の発信を拡充させていきたいです。街のドローカルなネタなど、特定の地域や趣味を深く掘り下げることは、キー局にはない私たちの機動力を活かせる領域です。一定の人にしか刺さらないかもしれない「尖ったコンテンツ」であっても、それを丁寧に発信し続けることで、地域ごとに生活者の当事者意識や愛着をより一層高めるメディアとして進化し、視聴者の期待に全力で応えられるようにしていきたいです。— 最後に、ホンネPOSTの導入を検討されている他企業様へメッセージをお願いいたします。 企業活動において、売上や視聴率といった数字を見ることはもちろん重要ですが、数字だけでは見えない部分にこそ本質があります。いつも声を上げてくれる熱心なファンだけでなく、普段は声を上げない方々、いわゆるサイレントファンの皆様が自社に対してどのような感情を抱いているのかを知ることは非常に重要です。「顧客理解を深めたい」「自社が置かれている状況や印象を改めて認識し、存在意義を再定義したい」といった課題をお持ちの企業様にとって、ホンネPOSTはお客様の内発的なホンネを引き出してくれる有効な手段になると思います。―ありがとうございました。瞬く間に寄せられた1,000件超・累計11万字のメッセージは、私たちの想像を超える圧倒的な熱量で、「趣味の番組が生きがい」「災害時に頼りになる」といったリアルな声から、サンテレビ様が県民の生活にいかに深く根付いているかが鮮明に浮かび上がりました。集まった声を単なる番組改善にとどめず、「存在意義の再定義」へと昇華させ、“マイクロローカル”な発信に挑まれる今後の進化が楽しみでなりません。はこぶんとしても、サンテレビ様と地域の視聴者の皆様をさらに深く、温かく繋ぐパートナーとして、これからも全力で伴走してまいります!お読み頂き、ありがとうございました!ホンネPOSTの導入にご興味をお持ちいただいた方はこちらからお問い合わせください。